東大では通過領域の問題が頻出です。
特に文系では出題される頻度が高く、通過領域の問題をしっかり考えられることは合否に直結する要素にもなります。
そこで今回は、通過領域の問題の対策について解説していきます。
東大を受けるなら通過領域の考え方はマスターして臨もう!
通過領域とは
通過領域の問題とは何かパラメータを動かしたときに点や線分、直線がどう動くのかを考える問題のことです。
例えば、以下の問題は2007年の東大理系数学第三問の点の通過領域を求める問題です。ここまでさかのぼれば一問ぐらい過去問を消費してしまってもよいでしょう。
通過領域の基本を学ぶために最適なシンプルかつとても良い問題です。ぜひ解いてみてください。
![](https://gyu-tongue.com/wp-content/uploads/2024/04/image.png)
今回はこの問題を通して通過領域の問題の考え方を伝授していきます。
この問題にアプローチできるようになれば、他の通過領域の問題についても同様に解けるはずです。
通過領域の問題に対するアプローチ
まずは、点Pと点Qが動くんだから、これらに対してパラメータを設定してやりましょう。
P(p,p^2)Q(q,q^2)と置いてみます。(フォントの都合上^は累乗だと思ってください。)
さて、このような何かを動かしたときの状況を追うという通過領域の問題では、求めるものが決まっています。
それは、パラメータの存在する条件です。
例えば今回の問題では、点(a,b)が領域Dに属するための条件を求めていきます。つまり、「(a,b)∊D」を同値変形しなさいよということです。
例を用いて考えてみよう
これを考えるために、まずは自販機を想像してみましょう。ボタンを押すとジュースが出てきます。
このとき、あるジュースがこの自販機で買えるための条件は、自販機にそのジュースに対応するボタンが存在することですね。
コーラが買いたいときに、コーラに対応するボタンがあれば買える、なければ買えません。
ここで本題に戻ります。
今考えている問題では、pとqが一つに定まったとき、それに対応するaとbが一つに定まるんです。(点Pと点Qが決まれば、対応したRが決まるということ。)
これって、自販機のボタンとジュースの関係ととても似ていませんか?
この問題における領域Dとは例えるなら自販機で買えるジュースの集合です。
一方、自販機のボタンの集合はpとqのセットである(p,q)の集合と考えられます。
(a,b)というジュースがD(買えるジュースの集合)に入っているということは、それに対応する(p,q)という自販機のボタンが存在するということと同じ意味なわけです。
ちなみに、このような「何かが決まるとそれに対応するものが一つに定まる」という問題は全部存在条件を求める問題です。全部自販機の例に当てはめて考えることができます。
これは関数の値域であれ線分の通過領域であれ全く同じなのです。
そして、「存在条件を求める」という目的が問題を解いている最中にブレてしまうから難しく感じてしまうんです。
したがって、求めるべき条件を最初にまとめて、あとはそれを同値変形していくだけという答案の書き進め方をすれば混乱を防ぐことができます。
模範解答
これを踏まえて私が答案を書くと以下のようになります。
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答案に書くべきことと、解く際に考えていることは異なるので、答案を左、解説を右に分けて書きました。
とてもコンパクトに整理されていて、今何をしているのか分かりやすい答案になっているでしょう。
市販の参考書の答案を見てみると、ほとんどが記号(∧,∨,∃,⇔,{)を用いずに、文章で流れを追っています。
それだと何と何が同値なのかもパッと見で分からないし、私ならそもそも何を求めようとしていたのか忘れそうです。
記号を適切に使用することで、このような混乱を防ぐことかでき、余計な思考を極力省いて正解にたどり着くことができるのです。
存在条件の処理をもっと詳しく見てみよう
“∃”の処理方法は一般に二つに分かれます。
逆像法・・・“∃”を素直に「存在する」と考えて処理する方法
順像法・・・“∃”を「動かす」と考えて処理する方法
このように、“∃”には二つの解釈方法があり、実際に問題を解く際にはどちらの解釈をするのが効率的か逐一考えることになります。
最初にqを存在条件の代入原理に基づいて消去し、その後にpの存在条件を「二次関数とx軸の共有点を持つ」と解釈することで対処しました。
もちろん、先にpの存在条件を処理する(=pを先に代入して消去する)こともできます。
しかし、これを「順像法」で処理すると、pとqを実際に動かして考えるわけですから最初からaとbにフォーカスして条件を整理しなければなりません。
(*)からいきなり順像法は明らかに動きを追えないので、どちらにせよ最初は逆像法です。
その後(*)’から順像法で考えようとしてaについて、(2p/3,2p^2/3)を頂点とする放物線の移動を追うことになります。pを動かすと、頂点が放物線を描くように放物線が動きます。
これはさすがに追うことができません。(下の境界がどうなっているのか分からない。)
そうすると、今回は順像法での∃の処理は難しそうだということが分かり、2つの∃を両方逆像法で処理する解法に落ち着いたわけです。
論理を詳しく学ぼう
この手の問題を解くためには、厳密に式を同値変形していくことが必要となり、これは論理の理解と直接かかわっています。
というか、東大は論理の理解を見るためにこの手の問題を毎度出題しているに決まっています。
また、通過領域に限らず、数学の問題では条件や命題を同値変形して真偽が一致する別の主張に変えて考えることがとても重要です。
その際に、論理はとても強いツールとなります。というより、論理という分野は数学の根幹をなす分野であり、本当は学校でももっと詳しく扱うべきなのです。
しかし、このような論理は教科書や市販の参考書ではあまり学ぶことができません。
そこで、当ブログでは「数学の論理」に焦点を当てて分かりやすく解説したオリジナル教材を作成しました。
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おわりに
通過領域は東大で頻出の分野であり、かつとても本質的な問題です。
今回の問題が解けなかったという方は、ぜひ論理をしっかり学んでしっかりとした同値変形を行えるようになって、もう一度考えてみてください。
以前とは間違いなく見え方が変わっていることでしょう。
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