東大の理科は化学・物理・生物・地学から2科目を選んで受験します。
そのうち、物理とも生物とも内容が一部被る化学はほとんどの人が取り、受験に関する情報が非常に少ない地学はほとんど取る人がいません。
そこで、多くの人が悩むのは物理を取るか生物を取るかというところです。
一般に東大を受けるなら物理がセオリーです。したがって、生物受験は不利だと言う人もいます。
確かに、生物選択者は物理選択者よりかなり少ないです。まず理科一類にはほとんどいませんし、生物や化学に興味のある人が多い理科二類、三類でも10人に一人ほどでしょうか。
しかし、選択する人数の差が難易度の差を表しているとは言い切れません。
例えば、東大理系を受ける人は数学が得意な人が多く、暗記の多い生物より少ない暗記量でも計算で答えを導ける物理を好みがちである、といった仮説も立てることができますよね。
「東大受験において生物は不利か」という問題に対する私なりの結論を先に言うと、「人によって異なる」です。
そこで、今回は科目選択で迷っている方に向けて、実際に生物選択で東大に入学した私が生物の特徴を解説し、その上でどのような人には生物が向いているのかついて議論していこうと思います。
ここで、一つだけ注意なのですが、私は化学・生物選択であったため、東大の物理の問題を解いたことはありません。したがって、誤った情報を避けるため東大物理に関しての情報は薄く、あくまで一般的に言われていることについてしか触れることができません。その点をご理解いただける方のみ続きをご覧ください。
ワタシ ハ セイブツ ダ
ワタシ モ セイブツ ダ
東大生物の特徴
東大において生物が不利かを考えるために、まずは東大生物の特徴を整理していきます。
入試問題は国語力
生物の試験は難関大学になるほど考察問題が多く、「単語を書け」のような知識問題が少なくなる傾向にあります。
東大の考察問題は多くの他の大学と同様に、遺伝実験の内容や生物の生態などに関する文章を読み、それに関する問いに答えるという形で出題されます。
内容は教科書に載っていないところも出題されます。もちろん教科書外の前提知識は不要なのですが、その代わりその部分は説明が長くなるため、文章を果てしなく読まなければなりません。
解答方法も記述式で、「3行程度で説明せよ」といった感じで出題されます。
したがって、文章をしっかり読んで図などを用いつつ内容を整理し、教科書範囲の知識をもとに考察を加え、それを言葉にして記述するという力が求められます。
前提知識が必要な国語の問題を解くイメージを持っておいてください。
教科書至上主義
考察問題が多いとはいえ、生物は基本的に暗記科目です。
東大の生物において、数問出題される単語問題は落とせないですし、知識を問う論述も相当数出題されます。
しかし、東大入試では、教科書外の知識が求められることはほぼありません。
したがって、教科書に書いてある知識を全て暗記することが大きな目標になります。
学習方法の基本は最後の最後まで教科書を読むことです。
また、教科書を読むことは考察問題にも役立ちます。
教科書の内容を隅々まで頭に入れることで、考察問題に必要な前提知識がつきますし、教科書を読むこと自体が読むスピードを速くしたり読解力を上げたりすることに繋がるためです。
ちなみに、生物の教科書は多数の出版社から出ており、これらの教科書すべてに目を通すに越したことはないのですが、多くの人にとってそんな時間はありません。
そこで、田部先生がこれらの教科書の内容を無駄なく一冊にまとめ、さらに分かりにくい部分に解説を加えた参考書を出してくださっています。
私は学校で配られた教科書の代わりにこれを最後の最後まで繰り返し読み込んで受験に臨みました!
今は科目選択前だと思うのですが、生物での受験を決めた方にはぜひおすすめしたい参考書です。
時間との闘い
生物選択には一つの大きなデメリットを背負うことになります。
それは、問題を解くのにとても時間がかかるという点です。
文章を読んで考察し、その内容を解答欄に記述するという一連の作業は、想像以上に時間を要します。
そのため、
- 文章を図に整理しながら考察する
- 字が多少汚くても猛スピードで書く
- ちょっと考えて分からない問題は即捨てる
のように、時間制限に対する対策が必要です。
科目選択の基準
生物の特徴が分かったところで、どのような人に生物選択が向いているのかを考えていきましょう。
暗記が得意な人
暗記の量は圧倒的に物理より生物の方が多いです。
生物基礎範囲から教科書に書いてある情報をすべて正確に暗記しなければならないからです。
一方で、物理は公式の暗記だけで済み、東進の苑田先生などの微積物理を使う先生から学べば、さらに暗記量を減らすこともできます。
これだけ見ると生物だけ大変かのように思われがちですが、その代わり物理は生物に比べて膨大な量の演習量を確保しなければなりません。これは東進の田部先生も授業でおっしゃっていたことです。
したがって、「黙々と教科書を読んで覚えること」と、「問題をたくさん解くこと」のどちらならやれそうかを天秤にかけ、前者なら生物、後者なら物理を選ぶのが得策です。
国語力に自信がある人
生物の問題は国語、物理の問題は数学に近いです。
したがって、自分にとってどちらがやりやすいのか、得意なのかを考えることも大切です。
どちらも論理的思考力が重要なのは言うまでもないのですが、文章からの読解力が高かったり言葉を用いて考察するのが得意なら生物、数式を使って議論を進めるのが得意なら物理を選択するのがよいでしょう。
そこそこの点数を安定させたい人
生物は物理に比べて高得点を取りにくいです。これには上述した解くのにかかる時間が関係しています。
生物は大量の文章を読んで考察を加えた後に膨大な量の文字を書かなければならないという性質上、すべての問題を解き切ることは困難を極めます。
それに対して、物理に関しては全ての問題を解き切るための時間は確保されています。
生物が物理に比べて不利と言われているのはこの差によるのではないかと私は思っています。
しかし、点数戦略という観点で、生物の方が優れている面もあります。
それは、得点の安定性です。
生物では
- 暗記しているだけで解ける問題が一定数出題される
- 計算問題が少ない分ミスしにくい
- 仮にある問題でミスをしたとしても、次の問題とつながっている場合には考察の矛盾が発生するため速やかに気づくことができる
といった特徴から、知識さえあればある程度の点数が保証されます。
一方、物理では簡単な問題と言っても単に覚えているだけで一瞬で点が取れる問題は出ないですし、式をいじる過程で計算ミスも発生しやすいはずです。
また、最初の問題をミスしてもその後の問題で気付かずに結局すべての問題が不正解となる場合もあります。部分点をくれる場合もあるかもしれませんが得点はかなり低くなるでしょう。
このように、生物は安定して得点を出せるが高得点は出せない、物理は安定性に欠けるが高得点を出せる可能性があるという違いがあります。
もちろん生物で高得点を取れる人もいますが、科目選択の時点で自分の適性が分かるはずもないと思うので、一般的な判断基準として理科で失敗しなければよいという方は生物、理科で稼がなければならないという方は物理を選ぶのがよいと思います。
併願校の範囲が狭まっても構わない人
これは事前に知っておく必要があるのですが、生物選択は物理選択に比べて受験できる併願校の範囲が狭いです。
理系受験において、物理で受験できないところは聞いたことがないですが、生物で受験できないところはたくさんあります。
例えば東大受験生に大きいところでいうと、物理選択の東大受験生がよく受ける慶応大学の理工学部は生物で受けることができません。
また、3つある早稲田大学理工学部のうち、創造理工学部は受けられなかったりします。
したがって、自分がうっすら受けたいと思っている大学の受験情報は事前に調べておき、それを知った上で科目選択に臨むことが大切です。
東大受験生が通常受ける併願校や私が実際に受けた併願校に関して気になる方は、以下の記事をご覧ください。
生物が好きな人
結局はこれが最も重要です。
数学や英語がいくら嫌いでも勉強しなければなりません。
その点、理科に関してはせっかく選択できるのですから、自分の興味のある分野を選んだ方が勉強がはかどるというものです。
もし生物が好きではない人が生物を選んだとしたら、興味のない文章をひたすら読み、暗記することになるんですよ。
あなたが上にあげた項目すべてに当てはまっていたとしても、それはさすがにおすすめできません。
勉強を継続するためには、ある程度の楽しさは必要だと思います。
また、物理と生物両方に同じぐらいの興味がある場合は物理を選択するのがおすすめです。
これは一つ上の併願校に関する項目と関わってくるのですが、途中で物理系に興味が偏り、物理学科や建築学科に行きたくなってしまっても、ほとんどの大学ではこれらを生物で受験することはできません。
逆に、生物系に興味が偏った場合、物理で受けられないというところは聞いたことがありません。
したがって、興味が定まっていないという方は念のため物理にしておくことをおすすめします。
番外編~物理生物という選択~
ここで、物理生物という選択についてご紹介します。
この組み合わせを選ぶ人は実に少数派ですが、実はメリットが多い組み合わせです。
これは東進の生物の田部先生もおっしゃっていました。
その理由としては、
- 解くのに時間がかからない科目と時間がかかる科目なので試験時間を有効に使える
- 国語に近い生物と数学に近い物理で脳の使う部分が異なり、交互に取り組むことで長時間勉強できる
といった理由があります。
田部先生によると、生物物理で東大を受けた人の合格率は異常に高いそうです。
これは生物物理という選択の結果なのか、この選択をする人には優秀な人が多いということなのか、どちらなのかは不明ですが、覚悟のある方はチャレンジしてもよいかもしれません。
ただし、受験できる大学・学部は化学生物選択以上に狭まるので、ご注意ください。
まとめ
このように、東大受験において生物と物理のどちらが有利かという問題は、おのおのの適性や”有利”という言葉の定義(安定か高得点か)によっても異なります。
ぜひ、上で述べたような基準をもとによく考えて決めるようにしてください。
意見の偏りを防ぐために、できれば物理選択の人の意見も聞いてみるとよいと思います!
生物選択を決めた方は以下の記事を参考にどうぞ!
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